[メモ]レトリック批評の教科書

レトリック,最近読んだ文献,ジャンル

社会批評での「レトリック批評」について概観したくて、たまたま見つけた教科書を2冊読んだ。

■日本コミュニケーション学会/編『現代日本のコミュニケーション研究 日本コミュニケーション学の足跡と展望』
(三修社、2011年)

日本コミュニケーション学会の40周年記念出版。区分として5つの研究領域(対人、組織、異文化、教育、レトリック)と1つの問題系の6部構成で、各部が3~7章に分かれ、各章は別々の著者によって書かれている(重複あり)。全31章で320ページ弱だから各章が約10ページで、印象はバラバラ。

お目当ては第V部の「レトリック」だが、せっかくなので第I部から順番に読んでみた。結果として、レトリック批評の大まかなイメージと分野の位置づけが分かったし、その他のコミュニケーション学についての自分の古い知識が更新できて、素人の自分には得るものはあった。ただ、読むのがしんどい章もあって、読み通すのは疲れた。

気になったのは、各章の内容も文献も英語圏のものばかりで、それ以上の興味が湧きにくく、次に読みたい本が見つからないこと。もうちょっと深く知りたい話題もあったのに。どんな読者を想定しているんだろう。

出版から11年経っていて、この手の本としてはそろそろ情報は古いかもしれない。進展や課題の解決はあったのだろうか。20年くらいの間隔がないと次は出ないかな。

各部や「レトリック」と「問題系」の2部の章の構成は次の通り:

  • 第I部 対人コミュニケーション(6章)
  • 第II部 組織コミュニケーション(3章)
  • 第III部 異文化コミュニケーション(5章)
  • 第IV部 コミュニケーション教育(5章)
  • 第V部 レトリック
    • 第1章 レトリック研究の源流
    • 第2章 1980年代までの現代レトリック批評
    • 第3章 1990年代以降の現代レトリック批評
    • 第4章 議論の理論
    • 第5章 レトリックとペダゴジー
  • 第VI部 コミュニケーション学の問題系
    • 第1章 カルチュラル・スタディーズ
    • 第2章 医療・看護
    • 第3章 メディア・テクノロジー
    • 第4章 ナラティブ
    • 第5章 精神分析
    • 第6章 映画/映像へのアプローチ
    • 第7章 表象

■鈴木健、岡部朗一/編『説得コミュニケーション論を学ぶ人のために』
(世界思想社、2009年)

レトリック批評の考え方と実践の方法論を紹介する教科書。姉妹編に『レトリック論を学ぶ人のために』(2007年)があって、上の学会編『足跡と展望』の「第V部 レトリック」の前半が『レトリック論を~』、後半が『説得コミュ論を~』に対応しているのでは(『レトリック論を~』のほうは未読)。

レトリック批評に焦点を絞った教科書としては、うーん、「レトリック」そのものについてイメージは明確になったし勉強にはなったし、レトリック批評の中にジャンル批評があることも理解できて嬉しかったけれど、文芸批評をかじったり『足跡と展望』を並行して読んでたりしてよかったなあと思うところも。そしてやっぱり読み通すのはしんどい。

日本語で読めるありがたい教科書で、もちろん『足跡と展望』にない話題もあって、読んでよかった。きっと『レトリック論を~』も読んだほうがいいのだろう。とはいえ内容を消化して自分のものにするために後で見直すのは必須で、もうちょっとまとまっていればと思わずにいられない(愚痴)。